葛飾区「新金線」旅客化がBRTで実現へ、路面電車から方針転換し早期開業目指す

葛飾区の長年の悲願である「新金線」の旅客化計画が大きく方向転換しました。
当初検討されていた鉄道(路面電車)による整備から、BRT(バス高速輸送システム)による整備へと方針を変更し、早期実現を目指すことになったようです。
100年の歴史を持つ貨物線が新たな役割へ
新金線は、総武線の新小岩信号場と常磐線の金町駅を結ぶ約6.6キロの貨物線です。1926年の開業から約100年にわたり貨物輸送を担ってきましたが、現在は1日上下9本の貨物列車が走るのみとなっています。
葛飾区では南北交通ネットワークの充実と地域発展を目指し、2017年から本格的な旅客化検討を開始。
2022年には学識経験者やJR東日本、京成電鉄などで構成される「新金線旅客化検討委員会」を設置し、本格的な議論を重ねてきました。
3つの整備案から「BRT専用道」を選択
検討委員会では以下の3つの整備方法を詳細に検討しました。
- 既存貨物線との共用案:既存の線路で貨物列車と旅客列車が共用
- LRT専用線追加案:複線化用地に新たに軌道を整備してLRT運行
- BRT専用道追加案:複線化用地に専用道路を整備してBRT運行
この中から、事業性と早期実現性を重視してBRT案が選択されました。
BRT選択の決め手は「現実性」と「柔軟性」
コスト面での優位性
BRT案の概算事業費は約320~560億円とされ、鉄道整備よりも大幅に安価です。費用便益比(B/C)も約1.1~1.7と良好で、事業として成立する可能性が高いと判断されました。
技術的課題の回避
最大の難所とされていた国道6号との交差部について、鉄道案では立体化が必須でしたが、BRT案では専用道から一般道への乗り入れが可能で、この課題を回避できます。
段階的整備の実現
金町駅付近の高架化などの課題を踏まえ、当面は北側区間(金町~高砂付近)を一般道利用とする段階的整備が可能になります。
住民からは賛否両論の声
2025年5月に実施された住民説明会では、早期実現への期待の声がある一方で、「なぜ鉄道ではないのか」という疑問の声も上がりました。
市民団体「新金線いいね! 区民の会」では長年LRT導入を支援してきており、方針転換に複雑な反応を示している面もあります。
LRTとBRTの違いとは
LRT(次世代型路面電車)の特徴
- 軌道(レール)上を走行
- 電力駆動で環境性能が高い
- 地域再生のシンボル性
- 固定インフラのため柔軟性は限定的
BRT(バス高速輸送システム)の特徴
- 道路上を走行、専用道で定時性確保
- 必要時は一般道への乗り入れ可能
- 高い柔軟性が最大の強み
- システム全体での速達性・定時性の確保が重要
今後の予定と課題
葛飾区では2025年内に「新金線を活用した新たな交通システム整備構想」を正式策定し、事業化計画の検討に着手する予定です。
ただし、当初目標の2030年頃の開業については、道路整備、車両調達、運行事業者選定など対応すべき課題が多く、開始時期は未定となっています。
地域交通の新たなモデルケースへ
新金線BRT化は、既存の鉄道用地を活用した新交通システムとして全国的にも注目される取り組みです。
実現すれば、葛飾区の南北交通の利便性向上だけでなく、他の自治体にとっても参考となる事例になることが期待されています。
約100年間貨物輸送を担ってきた新金線が、新たな時代の地域交通の担い手として生まれ変わる日が近づいています。










